直接法と間接法
「直接法」「間接法」とは、どの言語で英語を学ぶかという、とても根源的で大事な部分です。
簡単に言えば、直接法は、英語を英語で教わるスタイルです。
それに対し、間接法は母語で解説を受けつつ英語を教わるスタイルです。
どちらの方法で進めるのかがハッキリすると、どのような講師属性を選べば良いのかがおのずと決まります。
ただし「英語の習得の仕方」という基軸に関わる部分であり、選択を誤るとその後の成長に大きな影響が出てくるので、的確な判断が求められます。
この講座でのおすすめは間接法
直接法か間接法か、最適な選択方法について詳しく解説する前に、この講座でおすすめするのは、基本的には「間接法」です…ということを、先にお伝えしておこうと思います。
基本的に間接法を勧める理由は、日本国内で「直接法が効果的に機能する環境のセッティング」は難しいためです。
言語学者によると、言語習得に関係する脳機能は年齢によって変化し、10~12歳の間に、脳内で「母語定着」が起こり、これにより言語の吸収力に大きな変化をもたらします。
簡単に言えば、母語定着前の脳は非常に柔らかく、どんな言語でも、まるでスポンジが水を吸い上げるように吸収し、理屈なく無意識的に言葉を習得していきます。
日本人が幼少期に、特に勉強することなく、日本語を吸収していきますよね?
まさに、あの感じです。
12歳ということは小学校6年生の年齢なので、理論上、小学校卒業くらいまでは直接法で語学習得を進めていけることになります。
ですが、直接法が効果的に機能するには、別途、条件が整う必要があります。
直接法が効果的に機能する3条件
今、日本では「英語は英語で学ぶべき!」みたいな流れが主体的になりつつあります。
私は、娘の語学習得において直接法と間接法の両方をまともに体験し、自分自身のアメリカ留学でも直接法での習得・習熟に向き合うことになりました。
さらに、直接法で進めた娘の中国語習得に関して、実は、かなり衝撃的な失敗も経験しています。
それらの経験からすると、仮に直接法が機能し得る年齢だったとしても、それが効率よく機能するためには、別途、やや特殊な環境を整える必要があります。
整えるべきは3ポイント。
まずは、
- 年齢が低いこと(言語吸収力が非常に高い状態)
に加え、
- 圧倒的な接触頻度
- 最適なカリキュラム
この3つが必要です。
これらが整わないと、直接法が効果的に機能する状態を確保するのは難しくなります。
それぞれを詳しく解説します
私達日本人は、実は、皆、直接法を体験しています。
生まれてから、特に文法などを勉強することなく自然と日本語を身につけていますよね。
あれが正に直接法なんです。
英語を直接法で習得するってことは、つまりは、あの状態に近い状態の中で英語を英語で身につけていきましょう…ってことなんですね。
そのために必要なのが3ポイントです。
年齢が低いこと(言語吸収力が非常に高い状態)
10歳~12歳のどこかのタイミングで母語定着が起こることは既にお話ししました。
そのタイミングを境に、言語吸収力が直接法には向かない状態になるとされていますが、そのタイミングが来るまで言語吸収力が問題なく高い状態を維持できている…というわけではありません。
幼少期に著しく高い状態にありますが、そこから母語定着のタイミングに向けて、ゆるやかにだんだんだんだん下がっていきます。
特に10歳以降は、下がり方が顕著になっていきます。
母語定着のタイミングを迎える前であればいつでも直接法が効果的に機能するというわけではないので、10歳より前、もっと言えば、それよりももっと前の年齢の方がより機能します。
私の娘が中国語の初歩を2ヶ月で習得することに成功した時、娘は6歳でした。
圧倒的な接触頻度
直接法は「わからない言語」で「わからない言語」を習得していくという、実はかなり難解なことをやっています。
当然、メリットとデメリットの両方が混在しています。
直接法が上手くいくには、メリットがデメリットを圧倒的に上回る必要があります。
直接法で進めたとしても、英語という言語の基本ルールを習得することには何ら変わりはありません。
日本語で、文法や表現の解説を受けられるわけではないので、理解するには圧倒的な接触頻度で凌駕していく必要があります。
我々日本人が、生まれてから両親や親戚、近所の方々から日本語のシャワーを四六時中浴びせられ、その中でだんだんと日本語を習得していきますが、それと似たような状況が必要になります。
圧倒的な接触頻度を保てなければ、メリットがデメリットを上回ることは難しくなります。
日本国内で直接法が上手く機能するか微妙なのは、この「圧倒的接触頻度」を整えることが簡単ではないためです。
直接法で進めることを検討している場合、特に、圧倒的接触頻度の部分を整備できるか否か、真剣に向き合う必要があります。
私の娘の場合、月曜日から金曜日まで、1日に7時間くらいの中国語への接触が実現する形になっていました。
最適なカリキュラム
ここまで、言語を吸収しやすい年齢と圧倒的接触頻度についてお伝えしましたが、この2つを整えれば上手くいくと思っている方がとても多いです。
ただ、これだけだと上手く機能しない場合があり、実は、それを実際に体験しました。
より確実性を高めるために「最適なカリキュラム」が整っていることを確認しましょう。
ここで言う「最適なカリキュラム」とは、10歳以前の子供が、直接法を使って言語を習得することが目的として作られている教材が整っている必要がある…ということです。
娘は直接法を採用している中国語スクールで、中国語の初歩を約2ヶ月で習得することに成功したことは既にお伝えしましたが、
実は、そのスクールに入れる前に、地元の幼稚園に1か月間通わせていました。
幼稚園なので費用も安く上がるし、周りは全員が中国語ネイティブの台湾人で、年も近い子たちばかり!
これで一気に中国語の習得が実現する!…と思っていましたが、1ヶ月後、娘が習得できた中国語は3つの言葉だけでした。
1つは、ニーハオ →こんにちは。
2つ目は、シェイシェイ →ありがとう。
3つ目は、チャーヨウ →頑張って。
朝から夕方まで、ずっと中国語の環境だったので、もっとすんなり習得が進むと思っていました。
でも、実際は、上手くいかなかったのです。
この状況に危機感を感じ、すぐに環境を変えました。
変更先は、中国語の語学スクールです。
結果はすぐに現れました。
1ヶ月後には、中国語で簡単な感情表現を始めたり、身の回りのものを単語で言えるくらいになっていました。
そして2ヶ月後には、普通に中国語で会話するレベルになっていました。
現に、2ヶ月をスクールで過ごした後は、もともとの幼稚園にまた戻したのですが、周りの子たちや先生などと普通にコミュニケーションが取れるようになっていて、
朝から夕方までそこで過ごしても、何も困らないレベルになっていました。
「地元の幼稚園」と「中国語の専門スクール」、どちらも
・10歳よりかなり前の年齢
・圧倒的接触頻度
これらはしっかりクリアーしていました。
ただ、「地元の幼稚園」にはなくて「中国語の専門スクール」にあったもの、それは「最適なカリキュラム」だったのです。
いくら言語習得に適した年齢で、ネイティブスピーカーに囲まれて毎日過ごしたとしても、「言語を学ぶことを目的としたカリキュラム」がないと、良好な環境を活かし切れないというわけです。
直接法で言語を学ぶためのカリキュラムがしっかり整っているかの確認は、絶対に怠らないことが肝心です。
現実的結果を考慮した現実的選択
以上ここまで、直接法が効果的に機能するための3ポイントについてお伝えしました。
直接法で進める場合、ぜひ参考にしていただきたいです。
同時に、日本国内での環境を考える場合、結局は直接法が上手く機能する環境を整えるのは簡単ではありません。
なので、年長さん以上の子供の語学力をゼロから成長させようとするなら、現実的には、間接法を主体にした方が良い結果を得られる可能性は高いと思います。
要は言葉の習得です。
わからない言葉をわからない言葉で説明され、英語の基本ルールがしっかり身に付くのか???
そこをしっかり考え抜いた上で「英語は英語で」を選ぶのなら良いと思いますが、
そういう検討はせず、盲目的に、単なる感覚、根拠のない思い込みなどから「英語は英語で」を選んだとしたら思うような結果は得られないことの方が多いです。
この部分の選択を親が誤ると「大事な我が子」が「頑張っても大したスキルを手にできなかった」という残念な結果を被ることになるので、慎重に進めていきたいところです。
直接法を選択してもOKなケース
ただし、日本国内であっても、直接法が機能するケースも当然存在しています。
「直接法」で進めていきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
まずは、ここまでで解説してきた
- 年齢が低く、圧倒的な接触頻度を確保でき、且つ、最適なカリキュラムが整った状態である場合
が挙げられますが、その他にも、
- レッスンが英語のみでも、教わっている内容がテキスト等で確実に理解できる構成になっている場合
- レッスンが英語のみでも、教わっている内容を親が補足して子供の理解度を確実に上げられる場合
- レッスンが英語のみでも、教わっている内容が確実に理解できる一定以上の英語力が既にある場合
などが挙げられます。
要は、「わからない言語」で「わからない言語」を習得していく中で、「教わったことを確実に理解できるかどうか」の部分を、いかに的確に補えるかがカギです。
最終的なゴールは、
- 英語の基本ルールが習得完了できること
- 伝えたいことが確実に表現できる状態になること
- 外国人が論理的で難解な英語を喋ってきても理解できること
この辺りになってくるので、そこへ無事到達できそうかをしっかり見極めながら判断することが大事になります。